稲盛和夫が「日本企業はユニクロになりなさい」と説いた真意とは?

稻盛和夫说:“日本企业应该像优衣库一样”,所传达的真正意思是什么呢?

「経営の神様」と評された稲盛和夫氏と、ユニクロを運営するファーストリテイリングの経営トップを担う柳井正氏は、稲盛氏の生前、互いに尊敬し合う仲だった。そして稲盛氏はかつて、「日本企業はユニクロのようになるべき」といった趣旨のメッセージを残しているのだが、その真意とは何なのか。(イトモス研究所所長 小倉健一)

被誉为"经营之神"的稻盛和夫和负责运营优衣库的快时尚零售集团迅销的经营领袖柳井正,在稻盛和夫生前这两人是互相尊敬的关系。稻盛和夫曾经传达过类似"日本企业应该像优衣库一样"的信息,但其中真正的含义是什么呢?(itomosu研究所所长小仓健一)

稲盛和夫氏と柳井正氏は日本の経済史に名を残す名経営者
平成を代表する経営者といえば、稲盛和夫氏、孫正義氏、そして柳井正氏ではないだろうか。いずれも日本の経済史に名を残す名経営者であろう。
ソフトバンクの創業者である孫氏は、令和に入って、巨額の投資が裏目となって大いに意気消沈しているところだが、京セラとKDDIを創業し、日本航空(JAL)を再建した稲盛氏の功績はさんぜんと輝いている。また、柳井氏が経営のかじを握り、ユニクロを展開するファーストリテイリングの決算も今、絶頂期にある。2022年9月から23年5月まで9カ月間の連結決算で、売上収益が2兆1435億円、純利益(最終利益)が2385億円となり、過去最高となったのだ。

稻盛和夫和柳井正是日本经济史上留名的杰出企业家。
提到代表平成时期的企业家,就不得不提到稻盛和夫、孙正义和柳井正。他们都是在日本经济史上有名的杰出企业家。
孙正义作为软银的创始人,在令和时期由于巨额投资失败而备受挫折。而稻盛和夫则创办了京瓷和KDDI,并成功重建了日本航空(JAL),他的功绩非常耀眼。另一方面,在柳井正领导下经营优衣库品牌的迅销公司也正处于财务业绩的巅峰时期。从2022年9月到23年5月的9个月合并财报中,销售收入达到了2.1435万亿日元,净利润(最终利润)为2385亿日元,创下历史新高。

「週刊ダイヤモンド」23年1月7・14日合併号の特集『社長が選ぶ現代の名経営者』において、1位に稲盛氏、2位に柳井氏がランクインしている。
稲盛氏と柳井氏、手掛けるビジネスは違うが、互いに相手への尊敬の念を隠していない。そして実は、稲盛氏は「日本企業はユニクロのようになるべき」といったメッセージを残している。今回は、その真意についてお伝えしよう。

在《周刊Diamond》2023年1月7・14日合并出版的特辑《社长们认为的现代有名企业家》中,稻盛和夫排名第一,柳井正排名第二。
稻盛和柳井虽然从事着不同的业务,但彼此之间都没有隐藏对对方的尊敬之情。实际上,稻盛曾说过“日本企业应该像优衣库一样”。这次我们将介绍其中的真正含义。

「柳井さんの生き様を分析せよ」稲盛氏は柳井氏をベタ褒め
稲盛氏と柳井氏が互いに尊敬し合っていた証拠として、例えば、「日経ビジネス」(14年1月13日号)に掲載された両者の対談が挙げられる。
稲盛氏は「柳井さんはわずか30年で零細企業を1兆円規模の会社に育て上げた。ただただやる気を持ち、余人が及ばない発想で挑戦してきたわけです」「柳井さんは知恵と創意工夫、そして自分の可能性を信じて努力してきた。つまり信じて思い続ければ誰にもできる。日本のリーダーが柳井さんの生き様を分析すれば、成長のために必要な『解』が出るはずでしょう」と評している。

“分析柳井先生的生存之道” 这是稻盛和夫对柳井正的高度评价。
稻盛和夫与柳井正之间相互尊重的证据,可以从两人发表在《日经商业》(Nikkei Business)(14年1月13日)上的对话中找到。
稻盛和夫说:“柳井先生在短短30年内将一家小企业培养成为市值1万亿日元的公司。他只是不断激励自己,用别人无法企及的想法挑战自己”。 “柳井正先生凭借自己的智慧、聪明才智和对自身潜力的信念努力工作着。换句话说,只要坚持信念和思考,任何人都能做到。如果日本的领导者们分析柳井先生的生存之道,他们就会找到发展所需的「解决方案」”。

また、日本経済が成長しなくなった原因として、稲盛氏は次のように語っている。
「日本は非常に成熟し、博愛の念や弱者への思いやりも強まっています。国民は生活保護法などで手厚く保護されるようになりました。しかしそれが、『何くそ』という思いで生きる人を阻む要因になっているのかもしれません。非常に逆説的な結果ですが」
「生きていくには自分で何とかしなきゃならない。本来は社会がこうした強い自覚を持てるように仕向けなくてはならなかったかもしれません」

此外,稻盛和夫还谈到了日本经济停止增长的原因,他说:
“日本变得非常成熟,充满了博爱之情和对弱者的关怀。国民现在在生活等方面得到了充分的保障。然而,这也许成为阻碍那些用'我自己能行'的态度生活的人的因素。这是一个非常矛盾的结果。”
"如果想活下去,人们就必须自己想办法。本来社会也许应该促使人们拥有这样强烈的自我意识。"

これには柳井氏も同意。当時、稲盛氏が「今の日本人に必要なのは強い闘争心だ」と訴えた近著『燃える闘魂』を引き合いに出して、次のように応じた。
「『燃える闘魂』を持っていれば人生はがらりと変わる。希望を持つことで人生の回転が変わり、いい方向に進んでいく。稲盛さんのおっしゃる『闘魂』とは、自分に期待することだと思います。自分には必ずいいところがあると信じて、どんな境遇でもやっていくことが大切です」

柳井正也对此表示赞同。当时,稻盛和夫在最近的著作《燃烧的斗志》中呼吁说:“当今的日本人需要的是强烈的斗志”。柳井正引用了这句话,并回应道:
"如果拥有“燃烧的斗志”,人生将会发生翻天覆地的变化。怀抱希望会改变人生的轨迹,朝着好的方向前进。我认为稻盛先生所说的'斗志'就是对自己有期待。相信自己一定有优点,无论处于任何环境,都要努力前行。"

両者には共通項も多い。一番の部分は、なんといっても中国ビジネスであろう。日中関係が「政冷経熱」だったのはとうの昔で、今では「政冷経冷」ともいえる状況において、両国民、両国家の激しい憎悪の応酬の中でも、ビジネスを広げようという努力をしてきたのだった。
また、18年になって、柳井氏の「現場から経営陣まで、全部自分で判断するようにしないと」という発言を聞いた記者から、「稲盛さんの唱えるアメーバ経営に通じるものがありますね」と問われ、こう返事をしている(「日経ビジネス」18年1月29日号)。
「ええ、一緒です。経営の王道は昔から何も変わっていません。古今東西、原理原則はどこも一緒ですよ。自分が大事なメンバーの一員だという自覚を持ってもらって、誇りを持って仕事をしてもらいたいのです」「もっと好奇心を持て」

这两位杰出企业家有很多共通之处。其中最重要的一点是对中国业务的共同关注。中日关系早已从过去的"政冷经热"变成了如今的"政冷经冷"的局面,尽管两国民众和政府之间存在激烈的互相憎恨,但他们都努力拓展业务。
另外,在2018年,有记者向柳井正提及他的言论:"从现场到经营层,全部都要由自己来判断。"并问道:"这和稻盛先生提倡的"Amoeba经营"有相似之处吧?" 柳井正回答道(刊登于《日经商业》出版于2018年1月29日号):
"是的,你说得对。经营的基本原则从古到今都没有改变。无论是古今中外,基本原理都是一样的。我希望他们认识到自己是团队中重要的一员,带着自豪感工作。" "要更加具有好奇心。"

「日本企業はユニクロのようになるべき」と説いた稲盛氏の真意とは?
こうした対談やインタビューでは、理念的な部分で両者が共鳴しているのだが、稲盛氏は著作『繁栄する企業の経営手法』(ダイヤモンド社)で、企業経営において日本企業は、ユニクロのような商社機能を持つべきだと述べている。
「日本企業がとるべき道の三番目として、日本のメーカーは、商社機能をもったメーカーに変身すべきだ、ということを上げたいと思います」

所谓"日本企业应该像优衣库一样"的真正意图是什么?
在这些的对话和采访中,虽然这两位企业家在理念上有共鸣,但稻盛和夫在他的著作《繁荣企业的经营方法》(出版社:Diamond)中表示,日本企业应该像优衣库一样具有贸易公司的功能。
"作为日本企业应该采取的第三个方向,我认为日本的制造业应该转变为拥有贸易功能的制造商"。

稲盛氏は商社機能を3番目としているが、前段で中国へ生産拠点を移すに当たっては、「1. 付加価値の高い、十分な利益の出る製品拠点は日本に残すこと」「2. 中国を生産拠点としてだけではなく、巨大なマーケットとしてとらえること」の2点が強調されている。
この二つの主張は、経済安全保障にも通じる考えであろう。国家の存続にとって必要な部分については、規制をかけ、日本の技術や機密が相手国に漏れないようにする必要がある。しかし、ユニクロが販売する服に代表されるように、安全保障と関係のない大部分の製品・商品については、消費者利益を優先して規制をかけない方が経済発展を遂げられるということだ。

稻盛和夫将贸易公司的功能列为第三点,但在前面提到,将生产基地迁至中国时,强调了两点:“1. 具有高附加值、能够获得足够利润的产品基地应保留在日本。”“2. 将中国视为生产基地,同时也将其视为巨大的市场。”
这两个论点可能也是适用于经济安全保障的观点。对于国家存续所需的部分,有必要进行限制,防止日本的技术和机密泄露给对方国家。然而,对于大部分与安全保障无关的产品和商品,如以优衣库所销售的服装,应优先考虑消费者利益,而不是过度监管,以促进经济发展。

このあたりのバランス感覚は難しく、しばしば論争になるのだが、一般論として日本社会はこの考え方を受け入れるべきだ。いくら対中国強硬論を述べたところで、日常品の全てから中国製品や「メイド・イン・チャイナ」を排除するのは困難であり、現実的には、きちんと守るべきところは守るという姿勢が求められよう。
一方、いいものを安く作るために中国へ生産拠点を移すと、どうしても日本では製造業の空洞化が起き、日本の国際収支が悪化してしまう。そこで稲盛氏は、日本企業は商社機能を持つことが大事であると指摘する。

这方面的平衡感很难把握,常常引发争论,但从一般来说,日本社会应该接受这种观点。尽管我们可能强硬地对待中国,但要完全排除日常商品中的中国的产品或"Made in China"是很困难的,现实中,如果没办法改变,就做好现在的事情。
另一方面,为了以较低成本生产高质量产品,而将生产基地迁至中国,必然导致日本制造业的空心化,并导致日本的国际收支恶化。因此,稻盛和夫指出,日本企业拥有贸易公司的功能是非常重要的。

京セラでは、中国で生産した製品に対して、原価プラス5%で日本側が引き取っているのだという。5%の利益を最初から保証する代わりに、全世界へさらに価格をプラスして販売することによって、日本側も利益を確保していく。稲盛氏はこの仕組みをこう解説している。
「ちょうどユニクロさんが、中国で生産委託したものを日本に輸入して販売しておられるように、単なる商社ではなくて、製造業として大きなグロスマージン(粗利、売上原価を差し引いた後に残った収益のこと)を得られるわけです。中国に生産拠点を移した日本の企業が、このような商社機能をもったメーカーとしてビジネスを展開していけば、利益は十分得られると思います」

京瓷公司对于在中国生产的产品,日本方面以原价加5%的价格收购。在最初保证5%的利润的同时,通过在全世界范围内将价格进一步提高进行销售,从而确保日本方面也能获得利润。稻盛和夫对这种机制解释如下:
"就像优衣库将在中国委托生产的商品进口到日本进行销售一样,它不仅是一家贸易公司,也是一家赚取高额毛利的制造商。如果将生产基地转移到中国的日本企业将其业务发展成为具有这种贸易公司功能的制造商,我认为它们将能够获得足够的利润。"

「そういう形で日本の本社が十分な利益を上げることによって、日本の雇用を守り、かつ日本の国際収支の悪化を防ぐことも可能になるのではないかと私は思っています」
全ての企業が中国へ進出することもなければ、したいと思っていない企業も多いと思うが、この稲盛氏のユニクロの分析から学べることがあるとすれば、「作って終わりでは先がない」ということだろう。
稲盛氏も柳井氏もそうだが、ただ生産するだけの企業でも、ただモノを運ぶだけの企業でもダメで、商品の企画から、売値の決定、販売方法、実際の販売までも、主体的に行うことが高収益をもたらすということだ。

"我相信,通过这种方式是可以为日本总部赚取足够的利润,从而保护日本的就业机会,并防止日本的国际收支恶化。"
并不是所有企业都会进军中国,也有很多企业并不打算这么做,但从稻盛和夫对优衣库的分析中,我们可以学到的是"仅制造"的模式是不可持续的。
无论是稻盛和夫还是柳井正都认为,仅是生产产品或者运输产品的企业都是不行的,必须主动规划产品、确定销售价格、销售方式甚至实际去销售产品,这样才能获得高利润。

この教訓は、ビジネスパーソンの働き方に落とし込むこともできる。ただ言われたことだけをやって終わるのではなく、自分の本業以外の部分にも目配せする。生産部門にいるのであれば、物流や販売にまで考えを持っておく必要があり、収益が取れるとなったら、臆せず前へ進めということだろう。

这个教训也可以应用于商务人士的工作方式。不要只做别人让你做的事就完了,而是要关注核心业务以外的领域。如果在生产部门工作,也需要考虑物流和销售等其他环节,一旦发现有盈利机会,就应该毫不犹豫地向前迈进。