フランスの暴動は「日本の近未来」だ…わが国に広がる「陰湿な階級社会」というリスク

法国的暴动是“日本不远的未来”…“隐秘阶级社会” 有可能在日本蔓延

3000人以上の市民が逮捕され、マクロン大統領のドイツ訪問が中止になるなど、フランス国内の暴動が収まらない。今回、発生した暴動の中心は、移民出身の若者とされるが、今年の5月には年金制度改革に反対する労働者のデモが発生し、警官隊と激しく衝突している。
デモの暴徒化は移民だけの話ではなく、背景には経済的・社会的な格差による国民の分断がある。数字的にはさらに状況が悪い日本にとって他人事ではない。

法国国内的暴动难以平息,导致超过3000名市民被逮捕,同时,马克龙总统原定的德国访问也被取消。这次暴动主要集中在移民背景的年轻人身上,然而,今年5月份还发生了反对养老金制度改革的工人示威运动,导致与警察发生了激烈的冲突。
这些暴力示威不仅仅涉及移民,其背景还涉及到经济和社会上的差距从而导致了国民之间的分裂。从数字上看,日本的情况更为严峻,这对于日本来说不仅仅是其他国家的问题,而是与日本自身也息息相关。

エリートがバランスを取る国
フランスは西側諸国の中では、もっとも社会主義的傾向が強く、所得の再分配など全体のバランスを取るという点では、それなりにうまくやってきた国といえる。同国はミッテラン政権時代、企業の国有化を積極的に進め、多くの大手企業が政府の支配下に入った。
シラク政権以後、再度、民営化が実施された企業も多いが、フランス政府は実質的に企業の経営権を掌握できる特殊な種類株を保有するなど、国家が企業経営に強く介入する政策を続けている。

一个精英制衡的国家
在西方国家中,法国是社会主义倾向最为强烈的国家之一,在收入再分配等整体平衡方面表现得相当出色。在密特朗政府时期,该国积极推进企业的国有化,导致许多大型企业纳入政府的支配之下。
在希拉克政府之后,许多企业再次进行了民营化,但法国政府仍然继续实施强烈干预企业经营的政策,例如持有能够实质上掌控企业经营权的特殊类型股份。

人事も同様で、大企業経営者の多くはENA(旧国立行政学院) に代表されるグランゼコール(官僚養成機関)の卒業者で占められており、企業経営は基本的に国家主導で行われる。
日本とはそもそも学制が異なるため単純比較はできないが、旧帝大や有名私立大学の成績上位者が、官僚や企業経営幹部など社会のあらゆるところでリーダーの地位を独占する図式と捉えて良いだろう。

人事方面也是类似的,大企业经营者大多是以国家行政学院(旧国立行政学院)为代表的官员培训机构的毕业生,企业经营基本上由国家主导。
虽然由于日本的学制不同,无法进行简单的比较,但可以说,前帝国大学和著名私立大学的高材生主导了社会各个领域的领导岗位,包括官僚机构和企业管理干部。

フランスでは、エリート教育を受けた人以外には、社会の支配層になる道がほぼ閉ざされているのが現実だが、フランスのエリート層は、自らの支配権を維持するため、社会における富の再分配にはかなり力を入れてきた。
エリートの特権は手放さないものの、そうではない国民には、不満が蓄積しないようバランスを取るというのが同国のやり方である。

法国的现实情况是,除了受过精英教育的人之外,其他人基本上都无法踏上成为社会统治阶层的道路,但法国的精英阶层为了保持自身的控制力,在重新分配社会财富方面做出了相当大的努力。
虽然精英阶层不会放弃他们的特权,但国家的做法是要在不让非精英民众积聚不满的同时保持一种平衡。

日本よりも圧倒的に豊か?
フランスでは過去にも暴動が発生しているが、鎮圧に憲兵隊を投入するなど独裁国家を彷彿とさせるような強権措置を発動する一方で、富の分配を積極的に行うという、まさにアメとムチの政策をうまく使い分けてきた。
こうした国の国民が幸せなのかという問題はとりあえず横に置いておき、フランスにおける一般的な労働者の生活は(少なくとも数字上は)日本よりも圧倒的に豊かである。フランスの労働者の平均年収は約5万3400ドルと、日本と比べて約1万2000ドルも高く、年間の労働時間は逆に約241時間も少ない(2019年)。

比日本富裕得多吗?
在法国,虽然过去发生过暴乱,但在镇压方面却采取了类似独裁国家的强硬措施,如派遣宪兵部队,与此同时又积极进行财富的再分配,可谓是巧妙地运用了奖惩并施政策。
暂且不论这个国家的民众是否幸福,法国的一般劳动者的生活(至少从数字上看)比日本显著富裕。法国劳动者的平均年收入约为5.34万美元,比日本高出约1.2万美元,而年工作时间则少了大约241小时(截至2019年)。

1日8時間労働とすると日本人より30日も休みが多く、しかも1.3倍の年収を稼いでいる計算になる(フランスでは5週間の有給休暇が法律で保証されている)。
家計に余裕があることに加え、年金制度が手厚いためフランス人の平均的な退職年齢(男性)は60歳と日本よりかなり若い(日本では年金だけでは暮らせない人が大半なので、退職平均年齢は68歳である)。
フランスの公的年金は賦課方式となっており日本の制度に近く、所得代替率(現役世代の年収に対して、どのくらいの水準の年金が給付されるのかを示す指標)は70%もある(日本は現時点で約60%)。

按照每日工作8小时的计算,法国人比日本人多休息了整整30天,而且年收入还多出1.3倍(法国法律规定享有5周的有薪休假)。
除了家庭有更多的经济余裕外,由于法国的养老金制度相当优厚,法国男性的平均退休年龄比日本要年轻得多(法国平均退休年龄为60岁,而日本因为大多数人仅靠养老金无法维持生活,平均退休年龄为68岁)。
法国的公共养老金采取了类似日本的征收方式,所得代替率(衡量工作期间收入的多少能够被养老金代替的指标)高达70%(而日本目前约为60%)。

フランスでは労働者の保護が徹底されており、一度、雇用した社員を解雇するのは容易ではない。このためフランス企業はなかなか新卒を採用したがらず、若年層の失業率が高いという社会的問題を抱えている。
こうした不満に対して、政府は経済的な支援を充実させることで対処してきた。
政府は、国民の不満が高まらないよう、失業保険など手厚い社会保障制度を用意しているほか、最近では出生率を向上させるため、教育の完全無償化や多額の給付金など、日本で言うところの子育て支援策を強化している。減税分も加えた実質的な累積給付額は、子どもが3人いる世帯では2000万円近くになるケースさえあるという。

在法国,劳动者的保护措施非常严格,一旦雇用了员工,解雇他们并非易事。因此,法国企业不太愿意雇用新毕业生,导致年轻人的失业率较高,这是一个社会问题。
为了应对这些不满,政府加强了经济援助。政府为了不让国民不满情绪高涨,建立了健全的社会保障制度,包括失业保险等。最近,为了提高出生率,政府还加强了类似日本的子女抚养支援策略,比如全面免费的教育和大量的津贴。实际上加上税收优惠后,家庭有3个孩子的情况下,累积的实际津贴金额甚至可以达到近2000万日元。

社会的な格差不満が爆発している
最近では仕事の多様化が進み、あまり推奨されなくなってきたが、すべての国民がバカンスを楽しめるよう、政府主導で半ば強制的に夏休みを取らせたり、コロナ禍で緩和されたものの、社内のデスクで昼食を取ることを法律で禁止するなど、労働者の権利が保護されるよう社会のあらゆる所に政府が介入してくる。
良くも悪くも、国家が育成したエリートが中心となって社会全体のバランスを取ってきたのがフランスという国と考えて良いだろう。

社会的不满正在爆发。
近年来,工作多样化的趋势在增加,虽然不再被大力推崇,但为了让所有国民都能享受假期,政府主导半强制性地规定夏季休假,以及即使在新冠疫情期间放宽了限制,也通过法律禁止在公司内部的办公桌上用餐等方式,政府在社会的各个层面介入以保护劳工的权益。
无论是好是坏,可以认为法国是一个由国家培养的精英主导,以实现整体社会平衡的国家。

ところがそのフランスで、年金の減額に反対する労働者や、現状に不満を持つ移民、あるいは若年層がたびたび激しい抗議活動を行っている。十分な所得の再配分がある国で、激しいデモや暴動が発生する背景として考えられるのは、社会的な格差ということになるだろう。
所得が高く、仕事にはゆとりがあり、年金もそこそこもらえるという点で、フランスの労働者はかなり優遇されている。希望の仕事に就くことができなかった場合でも、各種手当が用意されているので、生活に困窮するケースは少ない。

然而,在法国,反对养老金削减的工人、对现状不满的移民以及年轻人经常进行激烈的抗议活动。在一个有足够收入再分配的国家中,激烈的示威和暴乱背后的原因可能是社会的不平等。
法国的劳动者在收入高、工作有余地、养老金也相对可观的情况下,享受了相当优待。即使不能得到理想的工作,也有各种津贴可供使用,因此生活陷入困境的情况相对较少。

コロナ禍の際には多額の給付金があっという間に支払われ、日本との違いをまざまざと見せつけた。フランスの相対的貧困率は8.4%とかなり低く、貧困大国である米国や日本の半分以下である。
だが人間というのは、経済的に余裕があればすべて満足なのかというとそうはいかない。自身のキャリアが社会によって固定化されており、機会が十分に開かれていないと感じる場合、経済的に十分な手当てがあったとしても、満足感を得られないこともある。

在新冠疫情期间,法国迅速支付了大量津贴,鲜明地展现出与日本的不同之处。法国的相对贫困率为8.4%,相当低,是贫困大国美国和日本的一半以下。
然而,人们并非只要经济上有余裕就能满足。当个人的职业生涯被社会固定化,并感觉到机会并未充分开放时,即使经济上得到足够的补贴,也可能无法获得满足感。

フランスでは、バカロレア(高校を修了したことを認定する試験)を受ければ、事実上、無試験で大学に入学できる。教育の無償化が徹底されているので、本人に意思さえあれば、どのような環境の国民であっても大学教育までは確実に受けられる。
だが、一般大学の卒業生はグランゼコール出身者と比較すると就職には圧倒的に不利であり、ましてや移民出身者となるとさらに厳しい。

在法国,只要通过高中毕业考试,事实上就可以免试就读大学。由于教育免费化得到了很好的实施,只要本人有意愿,无论来自何种背景的国民都能确保接受大学教育。
然而,一般大学的毕业生与官僚培养机构的毕业生相比,在就业方面明显处于劣势,尤其对于移民出身者来说更加困难。

陰湿な階級社会が広がる日本
フランスのエリート主義に対しては国民から反発の声が上がっており、マクロン大統領はENA(国立行政学院)を廃止し、新しい機関を設立した。もっともマクロン大統領自身もENA出身であり、他のグランゼコールはそのままなので、今回の廃止は単なるパフォーマンスとの見方も多い。
だが、戦後フランス社会で特権的な立場を欲しいままにしてきたグランゼコールのひとつが国民から批判され、廃止に追い込まれたのは大きな変化と言ってよいだろう。

弥漫着隐秘阶级社会的日本
针对法国的精英主义,国民发出了反感之声,马克龙总统取消了ENA(国立行政学院)并设立了新机构。不过,值得注意的是,马克龙总统本人也是ENA出身,而其他官僚培养机构则仍然存在,因此有很多人认为这次的取消只是做做样子。
然而,战后的法国社会一直容忍了几个官僚培养机构拥有特权地位,而其中一所遭受国民批评并被废除,可以说是一个重大的变化。
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フランスでは今回の暴動をきっかけに、右派政党を中心に「暴徒を徹底的に鎮圧せよ」という声が高まっている。だが、今回のデモがたまたま移民中心だったに過ぎず、年金デモが激化したことからも分かるように、社会の中核を占める労働者の不満も相当程度、高まっている。移民を排除すれば状況が改善するという単純な図式でないことは明白だ。
もっと年金が欲しいと主張するフランスの労働者や、差別を訴える同国の移民出身者、あるいは自身の処遇に不満を持つ非エリート層の反発が、どの程度、正当性を持つのかともかく、経済的な手当てのみで問題を解決するのが難しいことだけは明らかである。

在法国,由于这次暴乱事件的缘故,右翼政党为主的声音呼吁“彻底镇压暴徒”日益高涨。然而,实际上这次抗议活动只是偶然集中在移民问题上,从养老金抗议升级的情况也可以看出,占据社会核心的劳工阶层的不满程度也相当高。显然只是简单地排除移民并不能改善目前的状况。
法国的劳工阶层主张更多的养老金,移民出身者抗议歧视,或者非精英阶层对自身处境的不满,这些反感到底有多少合理性,无论如何,单纯通过经济手段解决问题是困难的,这一点是显而易见的。
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日本は明治維新をきっかけに身分制度を完全に廃止しており、階級がほとんどないという点で米国社会に近い。一方、日本は米国ほどの競争社会ではないため、学歴や勤務する企業の規模、あるいは就業形態(正規・非正規)による、新しく陰湿な階級社会が形成されつつある。
単純に数字だけから比較すると、日本の状況はフランスよりはるかに悪く、(権威や権力に対して異様なまでに従順な日本人の国民性を無視すれば)いつ大規模なデモが発生してもおかしくない。フランスで発生した各種暴動は、今後の日本社会にとって参考になる部分が多いにありそうだ。

日本在明治维新时期彻底废除了身份制度,几乎没有阶级,与美国社会相似。然而,日本不像美国那样是竞争激烈的社会,因此,根据学历、所在公司的规模或者就业形式(正式或非正式雇佣)等因素,一个新的隐蔽阶级社会正在形成。
简单从数字上比较,日本的情况远比法国糟糕,(如果忽视日本人民对权威和权力异常顺从的国民性),大规模抗议活动发生也并不奇怪。法国发生的各种暴乱,可能对日本未来的社会发展有很多值得借鉴的地方。