訳者あとがき

大森 望
译者后记
大森望


あの『三体』は、ほんのプロローグでしかなかった! 地球文明と異星文明が織りなす壮大なドラマはいよいよここからが本番。分量が前作の五割増しになっただけでなく、時間的にも空間的にも桁違いのスケールで想像力の限りを尽くす。三部作の中ではこれが最高傑作との呼び声も高く、実際、エンターテインメントとして図抜けていることはまちがいない。前作を読んで高まりきった読者の期待を裏切らないどころか、予想をはるかに超えるスリルと興奮、恐怖と絶望、歓喜とカタルシス、ロマンスとアクションを満喫させてくれる。

《三体》现在看起来只是序幕!地球文明与外星文明共同构成的盛大戏剧的本篇终于开始上演。《黑暗森林》与前作相比,不仅增加了五成的篇幅,无论在时间还是空间都有着数量级程度的差别,穷尽了想象力的极限。三部曲中本作通常被誉为最高的杰作,事实上毫无疑问,作为娱乐小说相当出众。呈现了远超预想的刺激和兴奋,恐怖和绝望,欢喜与净化,浪漫与动作,之前读过前作而抱有高期待的读者也绝不会失望。


ご承知のとおり、この《三体》三部作(または《地球往時》三部作)は、全世界で累計二千九百万部以上を売る驚異的なベストセラーとなり、小説界に革命を起こした超弩級の本格SF巨篇。諸般の事情で日本では翻訳が遅れたが、二〇一九年七月、第一作の『三体』日本語版が早川書房から刊行されると、たちまち大評判となり、増刷に次ぐ増刷。発売一カ月で十二刷に達し、電子書籍と併せて十二万部という、翻訳SFの単行本としては前代未聞の数字を叩き出した。反響もすさまじく、主な活字メディアだけでも百を超える書評が出た。そのほんの一部を抜粋して紹介すると──

如您所知,《三体》三部曲(又作《地球往事》三部曲)是在全球范围取得累计2900万本以上销量的惊人的畅销书,作为在小说界引起了革命的超级科幻文学巨著。因为种种原因,日本国内的翻译开始较晚,2019年7月,第一部日语版《三体》由早川书房刊行,很快大受好评,多次增加印量。发行后一个月重印多达12次,加上电子版销量足有12万册。就单行本翻译作品来说是空前的。反响也相当强烈,仅主流纸质媒体就发表了100多个书评。以下为部分摘录:


「まず本作の面白さというのは、理学、工学、社会学に人間ドラマとあらゆるものが息もつかせず押し寄せてきて積み重なっていくところにあり、かつて日本で小松左京がこの技法を駆使して傑作を生みだし続けたことを彷彿(ほう ふつ)とさせる。/進むごとに広がり続けるお話が一体どれほどの大きさになるのかについては、まず間違いなく大半の人々の予想を遥(はる)かに超えることになるはずである」(共同通信、円城塔氏)

“首先本作的有趣之处在于,理学,工程,社会学科与发生于现实的故事等等以令人窒息的速度奔涌堆积起来,令人感到仿佛是过去日本作家小松左京曾用这种技法来不停产出杰作。/随着阅读进度而扩展的故事舞台,究竟会发展到多么广阔呢?可以说,应该是远超大多数人的期待。”(共同通信,圆城塔)

「高邁(こうまい)な物理学の知識をベースにした圧倒的なスケールの小説。中国には三国志や水滸伝などスケールが大きい物語が多い。本書はそれらに匹敵するだろう。中国は小説でも世界を支配するのか」(読売新聞、江上剛氏)

“基于高等物理学的规模庞大的小说。中国拥有众多像三国志和水浒传等巨著。本书是能够与之匹敌的吧。小说方面中国也在全世界处于支配地位。”(读卖新闻,江上刚)

──という具合(ちなみにこれらの特徴は本書にもそのままあてはまる)。この『三体』は、SF作家?評論家などの投票で決まる年間ランキング「ベストSF2019」海外部門でもダントツの1位を獲得したが、その読者層はSFファン以外にも大きく広がった。ビジネス誌〈ダイヤモンド〉やカルチャー誌〈STUDIO VOICE〉が山西省にある著者の自宅に赴いてインタビューを敢行したり、科学誌〈日経サイエンス〉が「『三体』の科学」なる大特集を組んだり、ふだんはSFを扱わないような媒体もこぞって『三体』をとりあげたのがその証拠。

——大致是这样的点评。(顺便说,这些特点对本书来说也不例外)正是这本《三体》,在由科幻作家·评论家等投票选出的“BEST SF 2019”海外部名列榜首,在科幻爱好者以外的读者群也急速扩大。经济周刊《Diamond》和文化杂志《STUDIO VOICE》远赴山西省的作者家中进行采访;科学杂志《日经科学》设立了“《三体》的科学”专题;平时未曾涉及科幻题材的媒体也不约而同地提到了三体就是证据。

この『三体』ブームを受けて、2019年10月には、著者の初来日も実現。ハヤカワ国際フォーラムの公開インタビューは台風19号のあおりで中止になったものの、早川書房で開かれた歓迎会では多くの日本人SF作家や翻訳者、編集者らと交流。台風通過後には、埼玉大学創立70周年記念事業?第5回リベラルアーツ連続シンポジウム「Sai-Fi:Science and Fiction SFの想像力×科学技術」に招かれ、藤崎慎吾、上田早夕里の両氏を含むパネリストたちと活発な議論を交わした。

受到《三体》潮的影响,2019年10月,作者初次访问了日本。受到19号台风影响,早川国际论坛的公开采访取消了,但在早川书房召开的欢迎会上,作者与许多日本科幻作家和翻译家,编辑们进行了交流。台风过后,受邀参加在埼玉大学成立70周年纪念活动·第5次文科系列研讨会“夏日:科学与幻想 SF的想象力与科学技术”,与包括藤崎慎吾、上田早夕里在内的出席者们进行了活跃讨论。
(Sai-Fi:英文无释义,有词典解释为源自意大利语,我的夏日。)

そんなこんなで、『三体』は2019年の日本を席巻したわけだが、冒頭に書いたとおり、その『三体』も、三部作全体のストーリーの中では、ほんの導入部に過ぎない。

就这样,《三体》在2019年席卷全日本。但正如一开始所写,《三体》可以说只是三部曲的序幕。
(译注:第一部和第二部梗概略)

というわけで、主に通信(情報)によるファーストコンタクトを描いた『三体』に対し、本書ではいよいよ、(アーサー?C?クラーク『2001年宇宙の旅』にオマージュを捧げつつ)物理的なファーストコンタクトが描かれる。ページ数が増えただけではなく、時間的にも空間的にもはるかにスケールアップ。異星艦隊の襲来、刻一刻と迫る地球滅亡の時……というあたりは「宇宙戦艦ヤマト」を彷彿とさせるし、作中に出てくる田中芳樹『銀河英雄伝説』を思わせる軍略や戦争哲学も披露される一方、変貌した未来社会の姿も見せてくれる(メインテーマとなる〝黒暗森林?理論については、陸秋槎氏の巻末解説に詳しい)。

如上所说,与主要通过信息进行交流的《三体》不同,本书终于(致敬亚瑟·C·克拉克《2001太空漫游》)描绘了与三体人的物理接触。(内容略)外星人入侵和地球毁灭的危急关头……这些描写就像《宇宙战舰大和号》的场面,作品中的军事战略和战争哲学则让人想起田中芳树《银河英雄传说》。此外也展示了剧变的未来社会形态。(有关黑暗森林理论的主题,陆秋槎在卷尾进行了详细说明。)






(中略)
(原文此处省略)

本書の翻訳作業の後半は、新型コロナウイルス禍ともろにぶつかり、テレビやネットで報じられる国内外の終末SFじみた光景が小説の内容と重なって、フィクションと現実の境目が曖昧になる気分を味わった。著者が敬愛する小松左京の『復活の日』が予言的なパンデミックSFとして脚光を浴び、ふたたびベストセラーリスト入りしたのも奇妙な偶然と言うべきか。それもまた、〝大きなSF?の力を示す実例かもしれない。

本书翻译的后半程,我震惊于新冠病毒造成的灾难,电视和网络所报道的末世流科幻小说般的国内外光景正与小说的内容相重合。虚构与现实的界限感觉好像变得模糊了。作者所喜爱的小松左京的《复活之日》作为富有预见的流行科幻小说而再次受到关注,再度登上畅销榜。应该说这也是个奇妙的巧合。或许同样也是显示了“大科幻小说”的力量的现实例子。